■相続人らの名義の株式等について、相続財産と認定した事例 相続人らの名義の株式について、被相続人が生前配当金等の法定果実を収受していたこと、各名義人の印鑑が被相続人自身の取引に使用されていた印鑑と同一であること、及び各名義人はこれらの株式等の取得の時期に取得資金を有していたとは認め難いことから、被相続人の財産と認めるのが相当である。 平成3年3月29日国税不服審判所裁決 |
■本件株式は、すべて被相続人固有の資金によって取得され、かつ、すべて同人名義で保護預かり又は登録されていることから、被相続人に帰属するものと認められるとした事例 本件株式は、被相続人名義ではあるが請求人に帰属する金員を被相続人に預託し、被相続人が運用した結果形成された請求人固有の財産であり相続財産ではない旨主張するが、本件株式の取得資金は、被相続人が所有していた土地及び建物の売却代金を原資としており、また、請求人が預託したとする金員の一部は、請求人名義の貸付信託に充てられていることから、当該株式は相続財産であると認められる。 平成4年12月15日国税不服審判所裁決 |
■無記名の本件貸付信託及び本件割引債は被相続人に帰属し、相続財産に当たると認定した事例 本件有価証券の証書の支配管理の状況並びに本件有価証券の運用の状況及び設定又は取得資金の状況等、いずれの点からみても本件有価証券は被相続人に帰属する財産と認められ、したがって、本件有価証券は相続財産となる。 平成4年2月26日国税不服審判所裁決 |
■相続人又はその家族名義の預金、株式及び割引債について、生前贈与された資金の運用により取得されたものではなく、被相続人が請求人に指示して管理運用していたもので、その一部を除き相続財産であると認定した事例 請求人は、相続人又はその家族の名義による株式、定額郵便貯金及び債権について、被相続人から贈与をうけた現金を資金運用して取得したものであり、請求人固有の財産であって相続財産ではないと主張する。 しかしながら、[1]相続人が請求人に対し、当該現金を贈与したと認定できる証拠がないこと、[2]毎年計画的に贈与されている現金については、贈与税の申告がされているが、請求人の主張する贈与については申告がされていないこと、[3]被相続人が請求人に対し資金の運用を指示し、請求人がその指示により管理運用していたことが認められることから、その結果形成された上記の株式等の財産は被相続人に帰属すると認めるのが相当である。 ところで、上記の財産の形成中に、明らかに被相続人以外の財産も組み込まれたことが認められるから、この組み込まれた被相続人以外の部分の財産に係る評価額を控除して相続財産としての評価をするのが相当であるので、原処分の一部は取り消すべきである。 平成6年10月4日国税不服審判所裁決 |
■他人名義となっている定期貯金の真実の所有者は被相続人であると認定した事例 請求人は、本件定期貯金は被相続人の孫のものであり、その資金源は孫の母が毎月1〜2万円の積立貯金をしてその満期時の昭和58年4月11日に本件定期貯金を設定したものである旨主張するが、本件定期貯金は同日以前からあった定期貯金が継続されているもので、また、主張する積立金額では孫の年齢からして、到底本件定期貯金の基となった定期貯金の額に達しないので、その主張は失当といわざるを得ない。 [1]被相続人名義の他の定期貯金と本件定期貯金の届出住所、届出印鑑及び申込書の筆跡が同一であること、[2]本件定期貯金の利息と被相続人名義の定期貯金の利息とを合わせて別段預金とした上で現金にしているが、これに使用された印鑑がすべて同一であること、[3]被相続人には、本件定期貯金の基となった定期貯金と被相続人名義の定期貯金を設定した頃、土地譲渡代金が入金していたこと等からすると、本件定期貯金の資金源は譲渡代金と認められ、被相続人が非課税貯蓄に着目して孫の名義を使用して、本件定期貯金を設定したものと推認することができ、原処分は相当である。 平成3年1月18日国税不服審判所裁決 |
■被相続人の妻名義及び子名義の預貯金及び有価証券がその管理状況及び原資等から相続財産であると認定した事例 ▼ 裁決事例集 No.74 - 255頁 請求人らは、本件預貯金等のうち、妻名義のものは、妻が被相続人との婚姻前から保有していた預貯金及び妻固有の収入並びに生活費を節約して貯めたヘソクリを原資として形成されたものである、子名義のものは、子が両親との同居期間中に子固有の収入から生活費として家計に入れていた金員等を原資として形成されたものである、また、一部のものについては被相続人から生前に贈与を受けたものである旨主張する。 しかしながら、本件預貯金等のうち妻及び子名義の郵便貯金の一部については、「郵便貯金メモ」等により被相続人が管理しており、被相続人がその処分権を有していたと認められること、本件預貯金等のうち以外の預貯金等についても原資は被相続人が出捐したものであり、その管理も被相続人により行われていたと認められること、妻の固有収入は本件預貯金等以外の預金に化体しており、本件預貯金等の原資たり得ないこと、子が固有収入を生活費として家計に入れていた事実を認めるに足る客観的証拠はないこと、生前に贈与を受けたと請求人らが主張する預貯金等について妻は贈与を受けたことはない旨答述している上、贈与されたと主張する預貯金等の管理運用は被相続人が行っており、贈与の事実は認められないこと等から判断すると本件預貯金等は相続財産であると認めるのが相当であり、請求人らの主張は採用できない。 なお、妻名義の普通預金1口については、原資が不明である上、口座開設時の印鑑届の筆跡も妻であり相続財産とは認められないから、原処分はその一部を取り消すべきである。 平成19年10月4日国税不服審判所裁決 |